LAB

参画企業による各界の専門領域に関わる研究をご紹介!
最高のコンディションと、パフォーマンスを発揮するために必要なこととは!?

正しい姿勢を試してみた
姿勢を整えて、気持ちよく働く

スマートフォンやノートパソコンが普及し、前屈みの生活が日常化しています。時には作業で取り続ける姿勢が、身体の不調につながっていると感じる事があるかもしれません。多くの企業ではデスクワークにおいて「座る・立つ」を切り替えることや、スタンディングワークを導入して、前屈みの姿勢を取り続けない健康的な働き方を推奨しています。
しかし、良い姿勢を意識しているはずなのに、その姿勢のまま維持しようと全く動かさないことで、かえって疲れてしまうことも。
そこで今回は、改めて良い姿勢を見直しながら、働くと姿勢について考えます。

理想の姿勢をキープ。でも、疲れませんか?

良い姿勢を持続させることで、身体にどのような影響があるのでしょうか。
一般的に言われている良い姿勢とは、

【正面から見た場合】
耳・肩が左右同じ高さ、腰のベルトが水平になっている

【横から見た場合】
耳の穴・肩・足の付け根・膝・くるぶしが一直線になっている

と、されています。

またスタンディングワークであれば、肩に負担がかかりにくいデスクの高さは、
作業時に肘がほぼ直角になる角度、またはそれより少し高めが、いいとされています。

理想の姿勢とスタンディングワーク図

ところが、デスクを正しく調整しても、「立っていると、すぐに疲れてしまう」「ずっとは保てない」という声がありました。この場合、姿勢のつくり方が影響しているのかもしれません。そこで、まずは正しい姿勢でスタンディングワークを行った場合の身体と心の状態を検証します。

姿勢検証:身体と心に効果あり

普段から姿勢が悪くならないよう気にしていても、「正しい姿勢ができているか」という自己判断は難しいものです。そこで、正しい姿勢を知るための器具を使ってみることにしました。 被験者は、FROM PLAYERS参画メンバーの2人。仕事では身体に負担がかからないイスやデスクを使用し、スタンディングワークも日常的に実施していますが、姿勢に関しては、改めて見直したいとの希望がありました。

まず、体幹訓練機器である「トランクソリューション」を装着して検証してみることにしました。

【検証①:トランクソリューション】
・歩行10分間実施
・スタンディングワーク 15分間実施
・使用前後の姿勢確認

検証①の様子

装着前後の比較

装着後は、短時間で効果を感じ、正しい姿勢を体感することができたようです。 被験者からは、 「正しい姿勢を体感でき覚えるきっかけになる」 「猫背で俯きがちに立っていたときに比べると、明るい気分になる」 「作業での疲れは感じなかった」 といったコメントがありました。 この器具は、無動力で自身の保持する身体能力や運動能力を向上することが可能なため、現在、リハビリ分野ではもちろん、企業健康経営分野からも注目されています。

しかし、日常的にオフィスで働きながら装着できる器具ではありません。そこで、オフィスなどでも衣類の下に装着できる手軽な器具として、「腰部骨盤ベルト」を試してみることにしました。

【検証②:腰部骨盤ベルト】
・スタンディングワーク 15分間実施

検証②の様子

装着すると、しっかり骨盤が立ち上がる感覚を感じる事ができたようです。 被験者からは、 「コルセットのように腹部を覆っていないため、その部分の筋肉が甘えることなく、インナーマッスルが付くことも期待できそう」 「これまで使用したことがあるベルトと違い、非常にフィット感がある」 「装着したまま、仕事や歩行が問題なくでき、立ち仕事もしやすい感じがする」 といったコメントがありました。

この器具は、痛みを出さないために腰を守るコルセットと違い、骨盤の広がりを緩和し腰を整え、運動や仕事での動きをサポートできるため、腰に負担がかかる介護や医療の現場で取り入れられています。

”オフィスで働く”についての器具による姿勢検証をしましたが、コロナ禍の在宅ワークが盛んになった今、どんなことができるのでしょうか。 在宅ワークでは、オフィスと同じような椅子やテーブルを用意できるとは限りません。そこで、自宅の椅子で“ながら運動”ができるアイテム「プシュットクッション」を、同じくFROM PLAYERS参画メンバーの1人に試してもらいました。

【検証③:プシュットクッション】
・ダイニングチェアでの読書やパソコン作業を実施

検証③の様子

椅子の座面に敷いて利用するこのアイテムは、骨盤が立った姿勢を感じつつ、筋肉がほぐれて鍛えられる感覚があったようです。 被験者からは、 「手軽に使えるので、仕事以外でもちょっとした時に“ながらトレーニング”ができそう」 「仕事に煮詰まった時などに気分転換に使ってみるのもいい」 といったコメントがありました。

正しい姿勢を見直すために、さまざまな器具を試しました。正しい姿勢は、身体への効果は勿論ですが、特に姿勢を正して顔が上がる事によって明るい気分になったり、気分転換の一助になるといった心への効果も期待できそうです。

次に、改めて働く人にとっての姿勢の効果について東洋大学ライフデザイン学部の勝平純司先生にお話を伺いました。

姿勢で変わる仕事のパフォーマンス

勝平純司(かつひら・じゅんじ)
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授。 東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座特任研究員。 国際医療福祉大学大学院博士後期課程修了。国際医療福祉大学 講師、新潟医療福祉大学 准教授を経て2020年4月より現職。主著『介助にいかすバイオメカニクス』『臨床にいかす表面筋電図』(以上、共著、医学書院)、『腰痛借金』(共著、辰巳出版)ほか。 2016年にトランクソリューション株式会社を設立し、自身が開発した機器の普及を行っている。

自覚症状がなくても、じわじわと溜まる身体への負担

人は、重力がかかる中で関節や筋で身体を支えながら生活しています。つまり生まれたときにはゼロだった関節や筋への負担は、年齢とともにじわじわと蓄積されていきます。蓄積された負担が限界に達したときに、腰痛などの身体症状が現れるようになります。悪い姿勢でいるとこの負担を蓄積するスピードが早くなると考えられます。

腰痛などの症状の出現の時期やタイミングには個人差があり、特に若い間は、身体のバランスが崩れていても自覚症状が全くないという人もいるでしょう。しかし、知らず知らずのうちに悪い姿勢が癖になっていきます。年齢とともに筋が衰えると、さらに姿勢が崩れやすくなり、腰痛を引き起こすだけではなく、背骨自体が変形することもあります。このような状況になると、仕事のパフォーマンスも低下して余暇も楽しめなくなります。悪い姿勢によって少しずつ積み重なった身体への負担が生活全体に悪影響を及ぼすこともあるのです。

良い姿勢維持のためには予備力が必要

では、悪い姿勢をとらないで働くためには、どうしたらいいか?
実は私は、ただ単に良い姿勢を意識するだけでは難しいと考えています。良い姿勢をとり続けるために常に100%の力を出し続ける必要があるとすると、すぐに疲れてしまいます。良い姿勢をとっても疲れないようにするためには予備力が必要です。予備力はトレーニングを行うことでつけることができます。腹筋を六つに割るほどでなくてもいいので、簡単なエクササイズでインナーマッスルを鍛えれば、予備力がついて良い姿勢が楽に維持できるようになります。

ちなみに私は自宅でテレワークを行っている時は多くの時間バランスボールに座って作業をしています。背中が丸まりにくいバランスボールに座ることで自然と良い姿勢を保つことができます。たまにボールの上で弾んだりボールを転がしたりしながら仕事中もエクササイズをすることも意識しています。

在宅ワークでも作業環境を整える工夫を

また予備力の不足は作業環境を整えることで補うことができます。
座った姿勢でのデスクワークではどうしても前屈みになりやすく、肩や腰への負担が大きくなります。また、ふくらはぎの筋も使われないため足のむくみにもつながります。

デスクワークでは、身長に合わせたデスクでスタンディングワークを取り入れる。腕を支えて肩や腰の負担を軽減するアームレスト、腰を支えるバッグレストが付いた椅子を利用するなどが、作業効率を上げるためにも有効です。

しかし最近は、在宅ワークの比率もあがっているため、非常に好ましくない作業環境で仕事をされているケースを伺うことがあります。例えば、常にソファで仕事をしていて腰を痛めてしまったというようなケースです。ソファの座面は柔らかいため骨盤が後ろに倒れやすく、ノートパソコンなどで作業すると画面の位置がどうしても低くなるので背中が丸まりやすくなります。また、楽なソファで常に過ごす生活では、寿命が縮まるという研究もあります。自宅でゆったりし過ぎると良い姿勢をとるための予備力が失われていくのである程度身体に負荷をかけることも必要です。

自宅でも高機能な椅子の使用が理想ですが、バランスボールに座りながらデスクに差し込むタイプのアームレストを組み合わせると肩や腰の負担を軽減しながら、背中が丸まりにくくなるのでとてもお勧めです。今回紹介されている「プシュットクッション」のような簡単なアイテムでも骨盤が後ろに倒れづらくなるので、とても良いと思います。

近年、出勤していても体調不良等の原因により仕事のパフォーマンスがあがらない、いわゆるプレゼンティーズムが問題視されるようになっています。プレゼンティーズムの原因には腰痛も含まれるので、悪い姿勢がプレゼンティーズムの一因となっているケースも少なくないと思います。

良い姿勢でいれば、身体面だけでなく心もポジティブになり快適に暮らすことができます。身体に不調を抱え、仕事のパフォーマンスが下がったまま働いて、大きなトラブルが発生する前に、さまざまな便利なアイテムを利用して負担が溜まりにくい身体づくりや環境づくりを目指しましょう。

人生100年時代、歩き続けるためのメンテナンスを

今回はさまざまな器具を使って、仕事のための姿勢について検証しました。実験に参加した被験者は、全員が腰痛などの身体の違和感を経験していたため、正しい姿勢で得るメリットを、より実感できたようです。

年齢と共に身体にかかる負荷は、メンテナンスで十分に減らすことが可能です。仕事に限らず、自分に合ったアイテムを上手に利用しながら正しい姿勢を意識してみることは、人生の後半における健康なライフスタイルへの投資にもなるのではないでしょうか。

企業横断型プロジェクト「FROM PLAYERS」では、“いいはたらくとは何か?”をテーマに、研究、実践、支援、啓発などの活動を行っています。

  • 自社の働き方改革の課題を把握したい。
  • 最適な施策の打ち方が分からない。
  • 課題抽出~分析~施策立案~実行までワンストップで見て欲しい
  • 共同研究をしたい
  • こんな活動をしてほしい

などのご要望やご意見ございましたら、下記お問合せフォームよりご連絡ください。


瀬戸口 祐剛