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最高のコンディションと、パフォーマンスを発揮するために必要なこととは!?
セミナー開催レポート
“眠った3割のパフォーマンス”引き出し術~オフィスに笑顔篇
皆さんは、最近1カ月間の自分の仕事を振り返った時、どのくらいの能力を発揮できたと感じますか?私たちの調査によると、日本のビジネスパーソンは、平均すると約7割程度の能力しか発揮できていないと感じています。つまり3割のパフォーマンスは眠っている、というのが多くの日本人の実情のようです。
5月29日~5月31日に日経BP社主催の人事系イベント『HumanCapital2019』が開催され、FROM PLAYERSのメンバーが『職場での笑顔』についてパネルディスカッションを行いました。パフォーマンスを上げる術は沢山ありますが、今回は身近に存在する「笑顔」にフォーカスしました。その模様をご紹介します!
高原:皆さんは、一日に何回笑いますか?
赤ちゃんは1日に400回笑うのに対して、大人になると15回に減るという有名な調査があります。人は年齢を重ねていくと、笑う回数が減っていく。そういう生き物だそうです。
以前私達が行った調査では、職場で笑う機会のある人は、ワークエンゲージメントやパフォーマンスが高く、ストレスが低い、といった面白い結果が出ています。つまり、笑顔はパフォーマンスを引き出す上で重要なアプローチとなります。
では、笑顔は職場においてとても大切なので作っていきましょう。と言われても、どのように作ればいいのか困ってしまいます。どのように職場に笑顔を作っていけばいいのかを、ライフスタイルの専門家の3人と事業活動の中で職場に笑顔を増やす取り組みを通じて、職場の笑顔論を考えていくことで新しい発見があるのではないかと考えています。
『マネージャーから笑う』
瀬戸口:最近、スポーツの現場では変化が起こっています。日本では昔から長年、スポーツは根性やスパルタ主義、厳しいプレッシャーに打ち勝つ練習をするといったイメージでしたが、最近では監督やコーチが笑顔の中で指導し、ミスをした時にもプレッシャーを与えず緊張感をほぐして、パフォーマンスを高められるようすすめているのが見受けられます。
要するに、怖い人というのが少なくなったのかなと思います。
高原:これは人事的に言いますと、「心理的安全性」のお話になりますね。組織の中にいる時に、自分が攻撃されるのではという心理状態にあると、なかなかパフォーマンスを発揮できなくなります。この心理的安全性を担保する為に、マネージャーが組織の中で発言しやすい環境をつくるように配慮する必要があります。
笑顔の研究には以下のような内容があります。
自分が笑った場合、しかめ面をした場合、相手がどのような表情をするのかという研究がありますが、大体半分くらいの人は笑ってくれるという調査データがあります。自分が笑えば、相手は2人に1人は笑う。しかめ面だとニュートラルな表情となります。要するに笑顔は発信するとそこに伝播していくものということです。
1つ目の笑顔のポイントとして、まず『マネージャーから笑う』ことではないかと考えます。
但しこのポイントは、職場の中でマネージャーと部下がフラットな関係なのかという部分も大きな問題です。
『同僚のグッドポイントをたくさん知る』
目黒:弊社では、文化祭という技術研修が年に1回あり、社長以外の全社員が参加します。技術に応じて作れる作品の大きさも違ってきますが、これに合格不合格を決めてランキングをつけていきます。すると、表現力やセンスの良さといった面から、この分野においては業務上の上司部下の関係性が逆転したり、作品を通じて普段一般社員とは距離が離れているような取締役の内面が見えることでコミュニケーションの質が上がるといった現象が起こったりします。
また、弊社はどうしても現場が付きまとう仕事ですので、労働集約型の中で物事に一生懸命打ち込む姿が方々にあります。表彰制度やランキングをつけるのが非常に好きな会社なので、「笑顔写真コンテスト」や「一本の植物にまごころ大賞」「経営理念を理解する大賞」といったものなど、色々な大賞をつけることで、それぞれの人達に注目していきます。そして年1回全社員が集まる時に皆さんの話題に上がるという事により、社員交流がさらに深まっていきます。
高原:今の職場の課題だと思いますが、働き方改革は時間を非常に濃縮するので、ビジネス上の付き合いばかりになってしまいます。ビジネスだけの付き合いになると、本音で笑いあえる関係をつくるのは難しくなり、人間関係がビジネスだけの出来る出来ないの強弱となるので、コミュニケーションにも同じ強弱が付いてしまいます。
そこで、目黒さんの職場のように、色々な大賞を通じて『同僚のグッドポイントをたくさん知る』事は、笑顔をつくる土壌として必要なのではないかと考えています。
これが、私達がオフィスで笑顔を考える2つ目のポイントです。
『ライフシーンを共有する』
阿部:弊社は自転車部品を開発、製造している会社なので、本社では約3割の社員が自転車通勤をしています。私自身も自転車通勤をしていて感じるのですが、仕事が始まる前に自転車通勤で身体を動かすことによって、仕事への活力や社員同士のコミュニケーションが高まる可能性があるなと感じます。
これを調査するために、社外の人に協力してもらい自転車通勤をした前後の気分状態を測ったことがありますが、自転車通勤をした方が電車通勤の場合よりも、心の活性度や安定度が向上するという結果になりました。つまり、自転車で身体を動かすことによって活動に適した気分状態をつくることができ、「コミュニケーションをとる」「笑う」という準備が自然と出来ているのかなと思います。
また、他社様には自転車通勤だけではなくサイクリング、つまり余暇の遊びも啓蒙しますが、そうするとビジネスシーンだけではなく、職場以外での繋がりが出来てお互いに距離が縮まっていきます。普段話す中で、そういったコミュニケーションをしっかりとっていくことが関係性を改善して笑顔につながっているのではないかと考えています。
私たちの会社でも、休日に社員同士でサイクリングをすることもありますが、走るのが速く体力のある部下が、上司の風除けになって助けるといったことがあります。そんな時は、身体を動かすことで血もめぐってテンションも上がっているので、コミュニケーションも生まれやすく、結果みんな笑顔になるのではないかと思っています。
瀬戸口:弊社はミズノグループになったということで、年間に運動会といったスポーツ大会が多くあります。事業所対抗のソフトボール大会であったり駅伝大会であったり、部活動や有志で集まって活動することも多く、野球やサッカー、バスケットボールなど各々がメンバーを募りスポーツを通じて交流しています。
社内で色々な会議が多いのですが、職場で初対面の人と会議をするとなると、なかなか発言が出ないといった事になりがちですが、スポーツ活動を通じて出会うと、そこでコミュニケーションが生まれているといった事もあります。
スポーツは、最初に言葉は必要なくコミュニケーションが生まれます。例えば卓球であれば、いきなり卓球を始めたりすると、周囲で応援し始めたりします。珍プレイが出ればそこで笑顔が出たりします。そして試合となれば、役割に徹することになるので上司部下関係なくコミュニケーションをしっかりととることになります。更に共通の趣味となれば、ますます盛り上がっていきます。
実はスポーツというのは、コミュニケーションの手段として非常に優秀なものなのではないかと考えています。
高原:ビジネスシーン以外に繋がりをつくるのは、ベタですが非常に重要で、改めて仕事の中に必要になってきているのではないかと思います。自転車であったりスポーツ大会であったり部活動であったり、このような『ライフシーンの共有』を見直すのが、笑顔をつくるために必要な3つ目のポイントになります。
『柔らかい/暖かみのあるものを置く・身につける』
目黒:ライフシーンを共有するという意味で、弊社グリーンを扱う立場としては、環境が笑顔やライフシーンをつくる場所になると考えています。グリーンのある環境からは自然とストレスホルモンが軽減したり、笑顔が生まれるリラックス効果が生まれるということで、緑による穏やかな空間をつくっていきたいと思っています。
高原:緑に触れている時に怒っている人はあまりいませんよね。
実は、人の心情というのは、環境に左右されるという研究もあります。ふかふかの椅子に座った場合と硬い椅子に座った場合で、中古車のディーラーにどちらの方が商談の成立が高いかを聞いています。
答えは、ふかふかの椅子に座っている時のほうが商談の成立が高いのです。
理由はとてもシンプルで、人は柔らかいものに座っている時の方が優しい気持ちになれるのです。笑うというのも、人の心の持ちようによりますが、実は環境にも大きく影響しているのではないかと考えています。『柔らかい/暖かみのあるものを置く・身につける』と笑顔に繋がるのではないかというのが4つ目のポイントとなります。
4点の具体的に笑顔になるにはどうしたらいいのかを以下に示します。
- 1:マネージャーから笑う
- 2:同僚のグッドポイントをたくさん知る
- 3:ライフシーンを共有する
- 4:柔らかい/暖かみのあるものを置く・身につける
これらが重要であると考えていますが、特に「同僚のグッドポイントをたくさん知る」や「ライフシーンを共有する」は今の働き方改革の上では難しいと感じています。
今の働き方改革における「生産性」というのは、時間に対してどんどん仕事の量を詰め込んでいく形になっているのではないでしょうか。そんな中で笑う時間や同僚と向き合う時間がとれているのでしょうか。
働く時間は、作業をする時間だけではありません。プラスとしてお互いを知り、お互いを高めあう、笑顔を生む時間をつくりませんか。
例え会議時間が10分減ったとしても、10分のコミュニケーションによって、量だけではなく会議のアウトプットの質にも効いてくるではないか。働く時間というものは、このような時間も含まれた上で設計していくことが大切ではないかと、私達は考えています。

阿部 竜士


瀬戸口 祐剛


目黒 秀憲


高原 良
