LAB

参画企業による各界の専門領域に関わる研究をご紹介!
最高のコンディションと、パフォーマンスを発揮するために必要なこととは!?

オンライン完結生活のセルフコンディショニング、見直してみた
不足した運動量を取り戻して、元気になる

社内ミーティングに参加して、就業後に日用品を購入。夜は同期と飲み会――。感染症拡大防止のため「新しい生活様式」の実践から1年以上が経過した今、こんな普通の一日がすべて自宅からのオンラインというケースも珍しくありません。
働き方の可能性が広がった一方で、長期にわたるオンライン環境での生活は、私たち一人ひとりの健康に少なからず影響を与えています。例えば、通勤がなくなった分「あまり歩いていない」などの自覚はありませんか?
今回検証するのは、等身大で無理のない運動習慣の方法です。自宅での生活が多くなっても、心身ともに元気に過ごすために知っておきたいセルフコンディショニングについて考えます。

気分が晴れないのは、運動不足のせい?

巣ごもり生活では、自宅での仕事をストレスなく進める工夫や、オフタイムを快適に過ごすためのアイテムに注目が集まりました。しかしオンラインでの働き方が常態となると、具体的にどこかが悪いわけではなくても、なんとなく気分が晴れない、と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
下記の表は、運動習慣がある人と運動習慣のない人、それぞれの抑うつ感(憂うつだ、不安だ、気分が晴れない)を調査したものです。その結果、運動習慣がない人の方が、ネガティブな感情を抱きやすいことが分かりました。

仕事のパフォーマンスと働き方に関する調査(2020年11月調査)
対象:20~60代のオフィスワーカー 5,000名

ここでいう運動する習慣とは、
  1. 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、
    1年以上実施
  2. 日常生活において歩行又は同等の身体活動を
    1日1時間以上実施
を指します。
1と2を両方継続していた人の場合、運動がすでに習慣化されていて、テレワーク中も積極的に運動を取り入れていたはずです。しかし1または2だけ、もしくは何もしていないという、運動習慣がない時間に追われがちなワーカーは、どうでしょうか。
問題なのは、そうした人たちの「通勤」「近所への買い出し」「レジャー」などの外出が、オンラインに取って代わってしまったこと。日常生活で意識することなくプラスされていた運動量が、大幅に減少している可能性があるのです。この運動不足や外出不足の閉塞感が引き金となって、不眠、不規則な食事、また仕事と生活の質を下げているのかもしれません。
ならば、マイナスになった運動量だけでも取り戻すために、「多忙」「運動は得意ではない」「すべてオンライン生活」という人に試してほしいセルフコンディショニングを検証してみました。
コンディションを底上げするプロの指導を求めて

今回体験してみたのは、FROM PLAYERSメンバー。日常、仕事や生活で必要なことを、ほぼオンラインで完結できる女性です。もともと運動習慣はなく、コロナ禍から「通勤・外出の頻度が下がり、歩数が大幅に減少」「体力の衰え」「なんとなくモヤモヤする」というコンディションを自覚していました。
まず体験してもらったのは、スポーツクラブ。運動専門の施設に通うことは、ハードルが高い印象があります。しかし初心者だからこそ、知識があるトレーナーのサポートが受けられる環境はベスト。客観的に自分の身体を把握する良い機会になります。

体験当日、初めての人向けの「はじめてパック」で、身体測定や丁寧なカウンセリングを受けるところからスタート。ここでは、全身の筋肉量の課題や今後の運動のために必要な栄養素などについて、具体的なアドバイスがありました。

身体測定とカウンセリング

運動をする前に行ったのは、ストレッチポールエクササイズです。ストレッチポールは身体の芯が整うため、運動をする前に行っておくのがベターだそう。この女性に最適な種目は10個と少ないため、器具さえあれば1人ででも取り組みやすいとのこと。
ストレッチポールに限らず、自宅での継続を念頭に、ここでストレッチなどの簡単な動きを習得するだけでも、セルフコンディショニングの第一歩になりそうです。

次はマシントレーニング。使う人の課題や目的に沿って、トレーナーのサポートでマシンの負荷や回数を変えて調整していくため、自分のなりたい身体の状態に近づけることができそうです。

ストレッチポールエクササイズ

トレーナーによるマシンの指導

感染予防対策も様々なことが行われていました。

  • 入館時の検温
  • マスク着用の徹底
  • 消毒液設置及び、マシン使用後の消毒の徹底
  • マシン間の飛散防止パーティションの設置
  • 人の密集を避けた間を空けてのロッカー利用
  • 共有スペースの換気強化 等

こうした対策は、フィットネス関連施設内のあらゆる環境を、一般社団法人日本フィットネス産業協会が作成した「フィットネス関連施設における新型コロナウイルス感染拡大対応ガイドライン」に基づいたもの。利用者に協力してもらいながら、安全・安心の取り組みが行われているそうです。

マシンの間にはパーティションを設置。使用後は消毒をします。

体験を終えて、「自分の身体の状態を知ることができた」「プロのトレーナーの指導で効果を実感しやすかった」というコメントから、初心者でもスポーツクラブに行けば運動に対するモチベーションがアップすることが分かりました。さらに大きな成果として、「エクササイズでは、インストラクターや参加者との一体感が生まれ、楽しかった」と、運動に対して前向きな気持ちを持てていたことでした。

<参考>スポーツクラブルネサンス    
https://www.s-re.jp/

しかし「忙しいオンライン完結人間」がいきなりスポーツクラブに頻繁に通うのは、少しハードルが高いかも知れません。
そこで次に、オンラインを利用したエクササイズを試してもらいました。

手軽さが魅力。オンラインエクササイズ

タブレット画面を見ながら自宅で参加

現在、エクササイズなどは、オンラインでも参加できるジムやスタジオが増加。「ストレッチ」や「ヨガ」などのラインナップも充実していることが多く、人気が出ているといいます。
この日、自宅から参加してもらったのは、スポーツクラブで体験したものとは別のエクササイズ「ピラティス」です。自分の姿を他人に見られないというのは、初心者が気軽に参加できるメリットの一つです。
また、今回受けたオンラインエクササイズはライブ配信なので、画面越しでもインストラクターからのアドバイスをいただくことができます。30分間というタームでしたが、「気分がすっきりした」「つながりも感じられ、達成感もある」といった、高い満足を得られました。自宅だからこそリラックスして参加できる点も良かったといいます。
配信されているエクササイズの中から好きなレッスンを選択して、時間や場所を選ばずに、すきま時間を利用することもお勧めです。

<参考>ルネサンスオンラインライブストリーム     https://rol.s-re.jp/

プロのフォローがあるスポーツクラブで、運動不足の解消の糸口を見つけた今回の検証。一番のポイントは、「楽しい」「辛くはない」と感じられたということです。そしてスポーツクラブに限らず、ネガティブな印象を持たずに運動を習慣にできれば、体調は改善されるはずです。

誰もが楽しく体を動かすコツはあるのでしょうか? オフィスワーカーの健康のエキスパートである、特定非営利活動法人健康経営研究会理事長の岡田邦夫氏にお話を伺いました。

習慣化や別の目的で身体を動かすようにするのが健康維持のコツ

岡田 邦夫氏
特定非営利活動法人健康経営研究会
理事長

大阪市立大学大学院医学研究科修了。大阪ガス本社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て同社統括産業医に就任。健康経営を提唱し、従業員の健康に関する講演や著書多数。

今こそ運動習慣をスタートさせるチャンス
コロナ禍で通勤などの機会が減ったことで、働く人の歩数が減少しています。一方で「じつは最近、運動習慣の定着が認められるようになっています」と、岡田先生は話します。なぜでしょうか?

岡田:動物としての人間は、身体活動によって心身の健康が維持されます。そして私たち“歩く動物”が、身体機能を保持して健康でいるための重要なポイントは、活動の不足を本能的に感じ取ることができるかどうかです。つまりコロナ禍に、運動不足を感じた人たちが、本能的に運動を取り込んで、習慣化したということです。

それならば、不足を感じる今のタイミングを上手に利用すれば、自分に合ったセルフコンディショニングの継続が可能かもしれません。ただし大切なのは、他人から指示された運動を実践するのではなく、自分の身体の警報をしっかりキャッチすることだそうです。

岡田:肩の凝りや足の筋肉がつるようであれば、ストレッチ。椅子に座って片足で立ち上がれなければ、筋トレを。猫が睡眠後にストレッチするのと同じように、動物としての機能を維持して、自分に必要な運動を補えれば、心身の健康を確保することになると思います。

苦手なマラソンに誘われるまま取り組むよりも、自分の身体の声をよく聞き、どんな運動を取り込むかを決めることが、重要だといえます。

「ゆっくり歩く」から初めて、徐々にステップアップ
では身体を「ちょっと動かす」といったことでも、健康に作用するのでしょうか? じつは、歩くことも快適なトレーニングになるそうです。

岡田:運動の最も基本的な考え方は、「臥位(横たわる)」よりは「座位(座る)」、次に「椅子に座る」、そして「立位」を保持すること。次のステップが「歩行」で、ゆっくりと歩くから、歩幅を大きくする、さらに徐々に速度を上げる「速歩」になります。また安全な場所で、つま先歩き、踵歩き、交差歩き、継足歩き、後ろ歩きなどは、下肢のトレーニングに最適です。

さらに、筋力のために「つま先立ち」、次に「かかと立ち」、そして「スクワット」とステップアップ。起床時の全身のストレッチ、腰のひねり、などいろいろな筋肉の緊張をとることもお勧めだと言います。

岡田:やはり、ちょっと動かすだけでは、体調の維持にとどまります。少し息が弾む「有酸素運動」になれば、心肺機能の強化につながります。

気分転換に、季節を感じながらの散歩でも良し。それから自分のコンディションに合わせて、有酸素運動を取り組めば、体力の増進が望めるはずです。

「面倒くさい」を打破する自分らしい目的を
ところが身体を動かすには「面倒くさいな」という気持ちが湧いてきます。どのような工夫で、忙しい日々に運動を取り入れればいいでしょうか?

岡田:私の場合、郵便物は、少し遠いところにあるポストに投函したり、論文で知った「腕立て伏せと心筋梗塞発症」の関係から、できる範囲で腕立て伏せを試してみたりしています。

何かを目的として、それに付随する身体活動を上手に活かすことが、岡田先生の日常生活での身体活動の確保です。「書店の隅から隅まで歩いて、どのような新刊書があるのかを探すのも楽しいです」と言います。

健康の保持は「面倒くさい」を打破するために、自分の目的や楽しみを運動に紐づけすることが、ポイントのようです。

いつでも、どこでも、少しでも。身体を動かす選択肢を増やす

パソコンを前にした作業に偏りがちな日々。スポーツクラブやオンラインエクササイズなどを利用したセルフコンディショニングの見直しは、体調管理のための気付きが多い体験になりました。
また運動不足を感じるということは、「運動をすべき」という、自分の身体からのメッセージでした。体調の変化に気が付いて、反応して身体を動かしていくことが、健康を維持する最初の一歩です。
運動が苦手な人も、朝起きたときにオンラインヨガを5分だけやってみる、音楽を聴きながら少し先のコンビニエンスストアまでウォーキングをするなど、無理をしない範囲からでいいようです。
楽しめて、目的がある運動のレパートリーを増やしていくことが、運動が習慣化して、将来、質の高い健康生活を送るための秘訣だといえます。

企業横断型プロジェクト「FROM PLAYERS」では、“いいはたらくとは何か?”をテーマに、研究、実践、支援、啓発などの活動を行っています。

  • 自社の働き方改革の課題を把握したい。
  • 最適な施策の打ち方が分からない。
  • 課題抽出~分析~施策立案~実行までワンストップで見て欲しい
  • 共同研究をしたい
  • こんな活動をしてほしい

などのご要望やご意見ございましたら、下記お問合せフォームよりご連絡ください。


樋口 毅